《130万円の壁》・・・配偶者の扶養に入っていて、パートタイム・アルバイトなどをしていると、一度は聞いたことがあると思います。130万円という金額は配偶者の(社会保険)扶養内で働ける、12ヶ月合計の賃金の目安となります。
130万円というのは、あくまで目安となる金額なので、12ヶ月の合計賃金が130万円超えてしまった場合であっても扶養をはずれない場合、逆に130万円を超えていないのに扶養から外れてしまう場合もあります。
どのような場合、扶養からはずれてしまうか、またその逆に扶養からはずれないか気になる方も多いかと思います。
うっかり130万円を超えてしまった場合の社会保険について解説
配偶者の扶養範囲内で働きたいと思っている、パートタイムやアルバイトのいわゆる短時間労働者は少なくありません。というのも、扶養から外れてしまうと所得税や社会保険料の支払い義務が発生し、働き方によっては世帯全体の収入が大きく減ってしまうケースがあるためです。
特に影響が大きいのが社会保険に関わる年収の壁である《106万円の壁》と《130万円の壁》です。会保険料は月額賃金や保険料率が異なるので一概には言えませんが、配偶者の扶養から外れてしまい、《130万円の壁》を超えて自身で社会保険料を支払うことになったら、最低でも1ヶ月に約1.5万円、年間で約18万円程度手取りが減ることになり、家計に大きな影響を与えてしまいます。
ここでは、うっかり130万円を超えてしまった場合の社会保険について《保険料はいくら支払う》《保険料の計算方法》《だまってたらバレる or バレない》等様々な疑問について解説しています。
【社会保険と税金】年収による2つの壁
短時間労働者である、アルバイトやパートタイムをされている方の中には、「夫(または妻)の扶養に入っているから年収〇〇万円に抑えないといけない。」なんてセリフを聞かれてたことがあると思います。いわゆる《年収の壁》というものですね。
一言で年収の壁といってもその種類は様々で、《100万円の壁》《103万円の壁》《106万円の壁》《130万円の壁》《150万円の壁》《201万円の壁》等があり、項目も《住民税》《所得税》《社会保険》《配偶者控除》《配偶者特別控除》等に分かれます
賃金がこの年収の壁を超えてしまうと、超えなければ支払う必要が無かった住民税や所得税、社会保険料の支払い義務が生じて手取りが減ってしまったり、配偶者控除が無くなったり、控除額が少なくなったりしてしまいます。
下記の表は、年収の壁をまとめたものになるので参考にしてみてください。
年収の壁一覧
配偶者の年収 | 住民税 | 所得税 | 社会保険料 | 配偶者控除 | 配偶者特別控除 |
---|---|---|---|---|---|
100万円以下 | 不要 | 不要 | 自己負担無し | 対象 | |
100万円以上 | 必要 | 不要 | 自己負担無し | 対象 | |
103万円以上 | 必要 | 必要 | 自己負担無し | 配偶者特別控除に切り替わる | 対象 |
106万円以上 | 必要 | 必要 | 必要(条件有り) | 配偶者特別控除に切り替わる | 対象 |
130万円以上 | 必要 | 必要 | 必要 | 配偶者特別控除に切り替わる | 対象 |
150万円以上 | 必要 | 必要 | 必要 | 配偶者特別控除に切り替わる | 配偶者控除が縮小 |
201万円以上 | 必要 | 必要 | 必要 | 対象から外れる | 対象から外れる |
簡単にグループ分けすると・・・
《100万円の壁》《103万円の壁》《150万円壁》《201万円の壁》は税金の壁、そして
《106万円の壁》《130万円の壁》は社会保険の壁となります。
このように《年収の壁》は多くの項目がありますが、今回は中でも特に影響の大きい社会保険の130万円の壁、(そして106万円の壁)にフォーカスしていきます。。
《130万円》《106万円》手取りに大きな影響を与える社会保険の2つの壁
《130万円》《106万円》どちらも社会保険の年収の壁と一括りに言われますが、その中身はかなり異なります。
《130万円の壁》は配偶者の扶養に入ることが出来るかどうかの目安となる年収で、《106万円の壁》は自身で社会保険(厚生年金・健康保険)に入る必要があるかの目安となる年収となります。ではもう少し掘り下げて見ていきたいと思います。
【社会保険】130万円の壁
となります。配偶者の扶養に入ることができれば、アルバイトやパートタイムで一定の収入があっても、自身で直接社会保険料を負担することなく、健康保険証がもらえたり、国民年金に加入することができます。これはかなり大きなメリットと言えます。
この130万円の壁は配偶者の社会保険に入れるかどうかを決める目安となるので、社会保険に入れるかどうかは、配偶者の勤務先の健康保険組合が決めることになりますが、130万円の壁の要件は以下の2つになることが多いです。
- 配偶者の収入の半分以下
- 自身の月額賃金108,333円(108,334円)以下
簡単に説明しておくと①の要件については、配偶者の月額の賃金が20万円で年収が240万円だった場合、配偶者の扶養にはいるためには、その半額以下である月額賃金10万円そして年収が120万円未満にする必要がります。
次に②の要件についてですが、《130万円の壁》は過去の年収を基準にしているわけではなく、これから・・・つまり未来の年収を基準としています。ただ、これから稼ぐ未来の年収は不透明でわかりにくいですよね。
そこで基準として採用される場合が多いのが130万円を12ヶ月で割った月額賃金108,333円(108,334円)となります。多くの健康保険組合では、《3ヶ月連続で月額賃金108,333円を超えたら》または、《3ヶ月の平均月額賃金が108,333円を超えたら》扶養から外れる等の取り決めをしている場合が多くなります。
また、130万円の壁は1月から12月までの合計金額と思われている方も少なくありませんが、上記と同様の理由で基準となる金額は月額賃金108,333円なので、合計の金額は基本的に関係ありません。繰り返しになりますがこれらの判断基準は、健康保険組合ごとに異なるので注意が必要です。
次にこの月額賃金108,333円(108,334円)に含まれるものについてですが、基本的には勤務先から受け取る全ての収入になることが多いです。なので、支給される交通費はもちろん、ダブルワークをしている場合には、もう一方の収入も合算して計算することになります。
《130万円の壁》を超えてしまった時の社会保険料はいくら払う?
前述の通り、《130万円の壁》【月額賃金108,333円(108,334円)】を超えてしまうと、配偶者の扶養に入れなくなるため、自身で社会保険、もしくは国民健康保険に加入する必要がでてきます。仮に自身で社会保険に加入した時の保険料《掛け金》についても触れて起きたと思います。社会保険ほ広義と狭義でその範囲が異なります。
- 《年金保険(厚生年金)》
- 《医療保険(健康保険)》
- 《介護保険》
- 《雇用保険》
- 《労災保険》
広義の社会保険は上記の5つ、そして狭義の意味での社会保険は下記の3つのことを指します。
- 《年金保険(厚生年金)》
- 《医療保険(健康保険)》
- 《介護保険》
雇用保険は保険料率が低く、労災保険は全額事業主負担であまり気にする必要はないので、ここでは、狭義の社会保険料の計算方法を紹介します。社会保険料は収入によって異なるので、今回は月額賃金11万円で12ヶ月で132万円の収入があったと仮定して話を進めていきたいと思います。
①《130万円の壁》を超えた時の《年金保険(厚生年金)》保険料
これが月額の厚生年金保険料をも求める計算式となります。
まず、標準報酬月額についてですが、これは、月額の賃金のことではありません。標準報酬月額は毎月のお給料を等級に分けて表したのもで、厚生年金は1~32等級・健康保険は1~50等級に分かれます。下記の厚生年金の1~14等級までの表にしたものです。
標準報酬 | 報酬月額 | |
---|---|---|
等級 | 標準報酬月額 | (以上)-(未満) |
・・・ | 58,000 | 0~63,000 |
・・・ | 68,000 | 63,000~73,000 |
・・・ | 78,000 | 73,000~83,000 |
1 | 88,000 | 83,000~93,000 |
2 | 98,000 | 93,000~101,000 |
3 | 104,000 | 101,000~107,000 |
4 | 110,000 | 107,000~114,000 |
5 | 118,000 | 114,000~122,000 |
6 | 126,000 | 122,000~130,000 |
7 | 134,000 | 130,000~138,000 |
8 | 142,000 | 138,000~146,000 |
9 | 150,000 | 146,000~155,000 |
10 | 160,000 | 155,000~165,000 |
11 | 170,000 | 165,000~175,000 |
12 | 180,000 | 175,000~185,000 |
13 | 190,000 | 185,000~195,000 |
14 | 200,000 | 195,000~210,000 |
表の見方ですが、まずは自身の賃金を《報酬月額》の列から探します。今回は、月額賃金11万円で話を進めているので、等級4の《107,000円~114,000円》が該当するので、標準報酬月額=110,000円ということがわかります。
次に厚生年金の保険料率は2004年から段階的に引き上げられ、2017年ですでに上限に達し2022年現在は一律で18.3%になっています。が、日本の法律では「厚生年金保険料率は事業主と労働者で半分ずつ負担」となっているので、個人負担分の保険料率は《18.3%÷2=9.15%》ということになりなります。
なので、月額賃金11万円の方が支払う厚生年金保険料は11万円×9.15%で、10,065円となります。つまり、毎月11万円稼ぐパートタイムやアルバイトをしている方は、毎月約1万円・年間約12万円の厚生年金保険料を支払う必要がでてきます・・・すごく損した気分になりますね。
1~14等級までの厚生年金保険料を下記の表にまとめておきます。
標準報酬 | 報酬月額 | 厚生年金保険料 | |
---|---|---|---|
等級 | 標準報酬月額 | (以上)-(未満) | 保険料率18.3%÷2(事業主負担) |
・・・ | 58,000 | 0~63,000 | |
・・・ | 68,000 | 63,000~73,000 | |
・・・ | 78,000 | 73,000~83,000 | |
1 | 88,000 | 83,000~93,000 | 8,052 |
2 | 98,000 | 93,000~101,000 | 8,967 |
3 | 104,000 | 101,000~107,000 | 9,516 |
4 | 110,000 | 107,000~114,000 | 10,065 |
5 | 118,000 | 114,000~122,000 | 10,797 |
6 | 126,000 | 122,000~130,000 | 11,529 |
7 | 134,000 | 130,000~138,000 | 12,261 |
8 | 142,000 | 138,000~146,000 | 12,993 |
9 | 150,000 | 146,000~155,000 | 13,725 |
10 | 160,000 | 155,000~165,000 | 14,640 |
11 | 170,000 | 165,000~175,000 | 15,555 |
12 | 180,000 | 175,000~185,000 | 16,470 |
13 | 190,000 | 185,000~195,000 | 17,385 |
14 | 200,000 | 195,000~210,000 | 18,300 |
表の通り、月額賃金83,000円程度(目安は88,000円)から厚生年金の支払い義務が発生する可能性があり、その場合厚生年金保険料は月額8,000円程度、年間で約96,000円程度となり、やはりパートタイムやアルバイトの収入を考えるとかなり高額に思えますね。次は健康保険料について確認していきます。
②《130万円の壁》を超えた時の《健康保険/介護保険》保険料
これが月額の《健康保険/介護保険》保険料を求める計算式となります。基本的な考え方は先ほど解説した厚生年金保険料と同様で、標準報酬月額に保険料率を掛け合わせることで保険料を算出することができ、事業主と労使折半(半分ずつ負担)するところも同様です。
細かい違いを言っておくと、厚生年金は1~32等級に分かれましたが、健康保険は1~50等級に分かれます。また、高止まりしている厚生年金保険料率と違い、健康保険料率・介護保険料率は毎年変動しさらに都道府県ごとに異なります。
下記の表は、東京都の令和4年3月分からの健康保険料/介護保険料を1~17等級までまとめたものです。
標準報酬 | 報酬月額 | 健康保険料 | 介護保険料を含む場合 | |
---|---|---|---|---|
等級 | 標準報酬月額 | (以上)-(未満) | 保険料率9.81% ÷2(事業主負担) | 保険料率11.45% ÷2(事業主負担) |
1 | 58,000 | 0~63,000 | 2,844.9 | 3,320.5 |
2 | 68,000 | 63,000~73,000 | 3,335.4 | 3,893.0 |
3 | 78,000 | 73,000~83,000 | 3,825.9 | 4,465.5 |
4 | 88,000 | 83,000~93,000 | 4,316.4 | 5,038.0 |
5 | 98,000 | 93,000~101,000 | 4,806.9 | 5,610.5 |
6 | 104,000 | 101,000~107,000 | 5,101.2 | 5,954.0 |
7 | 110,000 | 107,000~114,000 | 5,395.5 | 6,297.5 |
8 | 118,000 | 114,000~122,000 | 5,787.9 | 6,755.5 |
9 | 126,000 | 122,000~130,000 | 6,180.3 | 7,213.5 |
10 | 134,000 | 130,000~138,000 | 6,572.7 | 7,671.5 |
11 | 142,000 | 138,000~146,000 | 6,965.1 | 8,129.5 |
12 | 150,000 | 146,000~155,000 | 7,357.5 | 8,587.5 |
13 | 160,000 | 155,000~165,000 | 7,848.0 | 9,160.0 |
14 | 170,000 | 165,000~175,000 | 8,338.5 | 9,732.5 |
15 | 180,000 | 175,000~185,000 | 8,829.0 | 10,305.0 |
16 | 190,000 | 185,000~195,000 | 9,319.5 | 10,877.5 |
17 | 200,000 | 195,000~210,000 | 9,810.0 | 11,450.0 |
介護保険は40歳以上の方が支払う保険料となるので、40歳以上と40歳未満で保険料は異なります。仮に月額賃金が11万円の場合は《107,000~114,000》の7等級なので、標準報酬月額は110,000円ということになります。
なので、
■ 健康保険料(40歳未満)は、110,000×9.81%÷2=5395.5円
■ 介護保険料含む(40歳以上の)場合、110,000×11.45%÷2=6297.5円
ということになります。
【社会保険】106万円の壁
となります。106万円の壁は2016年10月に生まれた、比較的新しい壁です。文言的には130万円の壁と似ていますが、内容がかなり異なります。
前述で説明した通り
■ 130万円の壁 ⇒ 配偶者の扶養に入れるかを判断
■ 106万円の壁 ⇒ 自身で社会保険に入る必要があるかを判断
します。
130万円の壁は配偶者の扶養に入れるかどうかを決めるので、配偶者の勤務先の健康保険組合が判断し、またその要件は基本2つでしたが、106万円の壁は、配偶者の社会保険とは関係ないので、自身の勤めているパート先・アルバイト先が社会保険加入を判断します。またその判断基準・要件は130万円の壁の2つに対して106万円の壁は5つもあります。
- 労働時間が週20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上 ⇒ 12ヶ月で105.6万円(約106万円)
- 2ヶ月を超える雇用見込みがある
- 学生ではない
- 従業員101人以上の企業 ⇒ 2024年10月からは51人以上の企業に適用化拡大予定
これら5つの要件全てに該当する場合は自身で社会保険に入る必要がでてきます。要件②の月額賃金8.8万円を12ヶ月にすると約106万円となります。これが106万円の壁とよばれる理由です。
《106万円の壁》と呼び名が付いていますが、110万円稼ごうが、120万円稼ごうが他の4つの要件1つでも該当しないようなら、自身で厚生年金や健康保険に加入する必要はありません。(というより加入できません。)逆にこれら5つの要件全てに該当した場合は、自身で社会保険に加入する必要がでてくるので、《130万円の壁》は関係のないものとなります。(配偶者の扶養には入れません。)
また《106万円の壁》の106万円という数字は、要件とほぼ関係ありません。重要なのは雇用契約上、月額賃金が8.8万円以上になっているかどうかということです。なので「繁忙期にたまたま残業して8.8万円を超えてしまった。」とか「ボーナスが出たので今月だけ8.8万円を超えた!」場合などは、月額賃金8.8万円以上の要件に該当しないのが一般的です。
逆に、雇用契約上は月額8.8万円以下であっても、毎月残業をして毎月8.8万円以上になっている場合や、雇用契約上8.8万円以上あるに無理矢理シフト調整等をして8.8万円以下にした場合等は、月額賃金8.8万円以上の要件に該当する場合があります。
この辺りの微妙は判断基準は健康保険組合によって異なる場合があるので、気になる場合は、勤務先に確認することをオススメします。
《106万円の壁》を超えてしまった時の社会保険料 いくら払う?
《106万円の壁》を超えた時の社会保険料も、《130万円の壁》の時と同様の方法で計算することができます。《厚生年金》《健康保険》共に標準報酬月額に保険料率をかけ÷2(事業主負担)が自己負担分の保険料となります。
標準報酬月額・保険料率共に前述の130万円の壁と同様なので、そちらの表を参考にしてみてください。
仮に月額賃金が毎月9万円だった場合は、標準報酬月額は《88,000円》に区分されます。この場合、月額の厚生年金保険料=《標準報酬月額8.8万円》×《保険料率18.3%》÷2《事業主負担》で8,052円ということがわかります。
次に、月額の健康保険料=《標準報酬月額8.8万円》×《保険料率9.81%》÷2《事業主負担》で4,316.4円ということがわかります。
つまり、《106万円の壁》で5つの要件すべて該当し月額賃金9万円だった時の月額社会保険(厚生年金・健康保険)料は月々12,368円ということになり、年間で約14.8万円程お給料から天引きされることになります。年収108万円から14.8万円・・・とても無視できる金額ではありませんね。
また繰り返しになりますが、2022年10月現在高止まりとなっている厚生年金保険料率(18.3%)とは違い、健康保険料率は都道府県やその年によって異なる為、都度確認が必要になります。先程の計算に用いた健康保険の保険料率9.81%は東京都令和4年3月分の保険料率となります。最新の保険料率は下記のリンクから確認することができます。
社会保険の加入はデメリットばかりではありません!
《厚生年金保険》《健康保険》はその名が示す通り保険です。保険は掛け金が必要。なので、厚生年金保険や健康保険は毎月のお給料から天引きという形で保険料が徴収されます。手取りが減るというのは大きなデメリットで、パートタイムやアルバイトの方はこの社会保険に強いアレルギー反応を示す方も少なくありませんが、ここではデメリットではなくメリットに目を向けてみたいと思います。
厚生年金保険加入のメリット
厚生年金は月額賃金の約9%が保険料と、社会保険の中で保険料率が最も高いです。ですがこの厚生年金保険料を支払うことで、将来もらえる国民年金に上乗せして厚生年金も受給でき、将来の保障が手厚くなります。
また厚生年金の保障は年金(老齢年金)だけだと思われている方も少なくありませんが、厚生年金保険には、病気やケガが原因で障害認定を受けた場合に受給できる《障害年金》、そして生活維持に関係が深い被保険者が死亡した時に受給できる《遺族年金》等も含まれています。
健康保険を自身で負担することによるメリット
健康保険は扶養に入ることで、自己負担することなく医療費負担が1~3割になります。ですが自身で健康保険料を負担することで、《医療費負担1~3割》の他、《傷病手当》や《出産手当》を受け取ることが可能になります。
《傷病手当》は病気やケガで3日以上連続して会社を休んだ場合、4日以降休んだ日に対して標準報酬月額の3分の2程度の手当金を受給することができます。
次に《出産手当》についてですが、出産手当は出産のため会社を休みその間の給与の支払いを受けなかった場合、出産前の42日から出産後の56日までの範囲内で会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。金額はこちらも先程と同様、標準報酬月額の3分の2程度となります。
その他にも《失業等給付》《介護休業》《育児休業》《職業訓練》など、扶養に入っている時には対象外となる様々な保障が、自ら社会保険料を支払うことで受けれるようになります。
かなり損!?130万円が超えていても勤務先の社会保険に加入できない場合
ここまで、《130万円の壁》《106万円の壁》について細かく解説してきましたが、《130万円の壁》を少しだけこえてしまうような働き方は、かなり損をする場合があるので注意が必要です。
仮に、月額賃金11万円(年間132万円)の収入があったと過程します。まずは130万円の壁についてのおさらいです。
- 配偶者の収入の半分以下
- 自身の月額賃金108,333円(108,334円)以下
このように、年間で賃金130万円(月額賃金108,333円)を超えてしまうような働き方をする場合は、夫(や妻)の扶養に入ることができず、自身で社会保険に加入する必要がでてきます。であれば、次の選択肢は自身の務め先での社会保険の加入です。自身の勤め先で社会保険に加入できる要件は下記の5つです。
- 労働時間が週20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上 ⇒ 12ヶ月で105.6万円(約106万円)
- 2ヶ月を超える雇用見込みがある
- 学生ではない
- 従業員101人以上の企業 ⇒ 2024年10月からは51人以上の企業に適用化拡大予定
これら5つの要件全てに該当すれば、自身の勤め先で社会保険に加入することができます。月額賃金11万円程度の働き方をするのであれば、②月額賃金8.8万円以上はもちろん、特殊な環境下でなければ、他の①③④⑤を満たす場合がほとんどです。
ただ、稀にいずれかの要件を満たさない場合がでてきます。特に⑤の従業員数の要件は自身ではどうすることもできません。こういった場合、自身の勤務先で社会保険に加入することはできません。日本では、国民皆保険制度といって、国民全員が公的医療保険制度に加入義務があるのですが、《配偶者の扶養》にも入れない、《自身の勤務先》でも社会保険に入れない場合はどうすればよいのでしょうか?
こういった場合、もう一つの社会保険である《国民健康保険》や《国民年金》に加入する必要が出てきます。ここで確認しておきたいのが、掛け金の差です。例えば年金です。
前述で紹介している通り月額賃金11万円の場合、月額の厚生年金保険料は月額10,065円です。次に国民年金の保険料についてですが、令和4年度の国民年金の保険料は月額16,590円です。つまりこの時点で、国民年金の方が、月額6,525円もの保険料が高いことが分かります。
さらに、厚生年金の保険料には国民年金も含まれているため、将来年金受給する時は、厚生年金に加えて国民年金も受給することができますが、国民年金に加入した場合は厚生年金が含まれません。
つまり月額賃金11万円の場合、厚生年金は掛け金が低く、将来もらえる年金は多く、逆に国民年金の場合は掛け金が高く、将来もらえる年金は少ないということになります。
これを回避するには、自身の勤務先で社会保険に加入するしかないので、勤務先や働き方を変えて《106万円の壁》5つの要件を全てクリアするようにしましょう。
130万円の壁をうっかり突破!《108,333円/月》超えたらばれる?ばれない?
《106万円の壁》《130万円の壁》どちらも要件に該当すると、自身で社会保険に加入する必要がでてきます。そして賃金の要件はどちらも年間ではなく月額賃金を目安とします。130万円の壁の場合は108,333円/月、そして106万円の壁の場合は、88,333円/月が目安です。なので、うっかりこの目安金額を超えてしまうような働き方をしてしまうと、1ヶ月~3ヶ月程度で被扶養者認定を取り消される可能性があります。※微妙な判断基準は保険組合によって異なります。
こうなると、時々あるのが「ばれなければ、ほっておいてもいいんじゃない?」という危ない考えです。
細かい話をすると、ばれない場合もありますがばれる場合がほとんどです。130万円の壁は配偶者の扶養に入れるかどうか?になるので、扶養に入れる・入れないの判断は配偶者の勤務先の保険組合で、ばれるタイミングもいろいろとあります。
話が分かりやすいように、妻が夫の扶養に入っていると仮定して話を進めます。まずばれるタイミングとしては、年末調整があげられます。夫は年末調整で妻の所得を記載する必要があります。また、保険組合による調査で判明する場合もあります。さらに所得額はマイナンバー制度でよりばれやすくなっています。ばれた場合は当然連絡も来ますし、面倒な手続きが必要になってきます。
- 医療保険未加入時の医療費7~9割の返還
- 滞納していた国民健康保険・国民年金の支払い
- 配偶者(上記の例だと夫)の会社に大きな迷惑をかける
自身で社会保険に加入すると、確かに手取りは減ってしまい大きなデメリットに感じますが、将来やもしもの時の保障は充実するので、「ばれなければ、支払う必要なし!」という考えはやめて加入条件を満たした場合は、きっちりと社会保険料を納めるようにしましょう。
まとめ-うっかり130万円を超えてしまった!社会保険の扶養はどうなる?
今回は、【うっかり130万円を超えてしまった!社会保険の扶養はどうなる?】についてまとめさせていただきました。要点をまとめておくと・・・
■ 130万円の壁・106万円の壁、共に年間賃金ではなく月額の賃金が目安になる。
■ 今月だけたまたま、108,333円(108,334円)を超えた程度では要件に該当しない場合が多い。
■ 逆に該当することも・・・結局は各健康保険組合が判断。
■ 社会保険料の支払いは、月額賃金の約14%程度となる。
■ 130万円をこえたら、ほとんどバレます。連絡も来ます。
「少し超えただけだから・・・」「うっかりしてただけだから・・・」は通用しないので、《130万円の壁》に該当しそうな場合は、配偶者の勤務先の健康保険組合に、そして《106万円の壁》に該当しそうな場合は、自身の勤務先の健康保険組合に早めに確認するように心がけましょう。